歯科医院を経営していく中で、「メインテナンス患者が少ない、定着しない」とお悩みの先生方は多いのではないでしょうか。
このようなお悩みを解決するためには、リコール率を上げる施策の実施が重要です。
この記事では、リコール率アップにつながる4つのポイントを解説していきます。

歯科における広義での「リコール」とは、「患者様に働きかける、繰り返し呼ぶ」ことを指します。治療中断患者を呼び戻すことも意味合いに含まれますが、この記事では「リコール=メインテナンスに呼ぶこと」の意で扱っていきます。

リコール率は以下の計算式で求められます。

リコール率(%)=メインテナンスで来院した患者数÷メインテナンス対象者数×100

リコール率を把握するためには、メインテナンス対象者の管理・把握が必要です。しかし、毎日の診療で忙しく、メインテナンス対象者を数値で把握できていない歯科医院は多くいらっしゃいます。

リコール率を上げる、つまりメインテナンス患者を増やすメリットは大きく2つあります。

①患者様の生涯の健康を守ることができる
②安定した収入を得られる

一つ目は患者様にとってのメリットです。メインテナンスで予防歯科に力を入れることで、患者様の口腔環境を守ることができます。メインテナンス患者を増やすことは、より多くの患者様の将来の健康を守ることにつながります。

二つ目は医院側のメリットです。メインテナンスで定期的に通ってくださる患者様を増やすことで、毎月安定した収入を得ることができ、医院の経営改善につながります。

リコール率を上げることは、患者様と歯科医院の双方にメリットをもたらします。

リコール率を上げる重要性についてお伝えできたところで、次はリコール率アップにつながるポイントを4つ解説していきます。

ポイント① メインテナンスの重要性を正しく伝える

メインテナンスの意義として、「お口の中をきれいにする」「病気の早期発見・治療ができる」などがよく挙げられます。これらも間違いではないのですが、患者様への伝え方を間違ってしまうと、メインテナンス患者の離脱を招いてしまいます。

例えば、患者様に「お口の中をキレイにするためにメインテナンスに来てください」とのみお伝えした場合、患者様は「メインテナンスに来ればむし歯にならない」と勘違いし、毎日のハミガキがおろそかになる可能性があります。これでは患者様のお口の健康は守れません。さらに、患者様は自身のお口への関心が低くなり、通院が面倒になってメインテナンスに来なくなります。医院側もメインテナンス時の歯石の除去に時間がかかるなど、業務の負担が増えてしまいます。

また、「病気の早期発見のためにメインテナンスに来てください」とのみ伝えられた患者様は、治療箇所が見つからないことが続くと通院をやめてしまいます。早期発見も大事ですが、そもそも病気にならない方がいいのです。病気を見つけるためではなく、お口のトラブルを予防するためにメインテナンスに来ていると理解してもらうことが必要です。

メインテナンスの意義とは、患者様が自身の口腔状態を把握し、お口への関心を高めることで、患者様の将来的な健康を守ることです。

「毎日の正しいハミガキや生活習慣を意識した上で、自身の口腔内や日々のホームケアに問題がないか確認するためにメインテナンスに行く」と患者様に理解してもらえる動機付けを行うことが、メインテナンス患者の離脱を防ぎ、リコール率アップにつながります。

ポイント② 患者様一人ひとりに合わせた説明をする

一つ目のポイントで、正しいメインテナンスの動機付けが大事とお伝えしましたが、そのためには患者様にきちんと伝わる説明をする必要があります。
弊社のコンサルティングでは、コーチングによるタイプ分けを用いて、患者様のタイプに合ったアプローチの仕方を重視しています。

タイプ分け4つと見分け方
タイプ好まれるアプローチ
コントローラースピーディーに結論から話される
プロモーター情報を多く与えられる
サポーター自分の気持ちを話しやすい声掛けをされる
アナライザー順序立てた細かい説明をされる
タイプ別の好まれるアプローチ

例えば、プロモーター気質の方には、口腔状態の説明を簡潔に要点から話す、アナライザー気質の方には、メインテナンスと歯の残存率の関係性を数値でお伝えすることで、相手に聞き入れてもらいやすくなります。

また、患者様の年代を意識した説明を取り入れることも効果的です。
ご年配の方へオーラルフレイルについて解説することで、健康寿命を延ばすためにメインテナンスが必要だという理解につながります。
お子様連れの方には、乳歯のむし歯が永久歯に及ぼす影響などをお話することで、小さいうちから歯科医院に通院する必要性を理解してもらえる場合があります。

きちんと伝わる患者説明のために、相手に沿ったアプローチを行うことが重要です。

患者様の性格や興味に合わせた説明で、メインテナンスの重要性を伝えることができます。

ポイント③ 次回の予約をその場で取ってもらう

リコール率が低い歯科医院の特徴として、治療やメインテナンス終了後に、次回の予約をその場で取らずに帰ってしまう患者様が多いことが挙げられます。
患者様は、「数ヶ月先の予定なんて分からないから、時期が近づいてきたら予約を取ればいい」と思ったまま、面倒になってメインテナンスに来なくなります。
医院側も「先の予約は取らないだろうな」という思い込みは捨てて、メインテナンスの予約は必ず取ってもらうという気構えを持ちましょう。
多少大げさでも、「予約を取って帰らないと、直前だと予約が取りにくくなりますよ」などとお声がけして、なるべくその場で予約を取って帰っていただくことを意識しましょう。

その場で予約を取って帰られる患者様を増やすことで、メインテナンスの離脱を防ぎ、リコール率アップにつながります。

ポイント④ 来院を促すツールを活用する

せっかく予約を取って帰られる患者様が増えてきても、予約日時を忘れてしまった患者様の無断キャンセルが続いてしまっては、リコール率は上がりません。
メインテナンスの時期なのに予約の連絡が来ない患者様や、患者様の予約のうっかり忘れは、各種アナウンスで防ぐことができます。

アポイントシステムのメッセージ機能やリマインド機能は、スタッフの負担になりにくく、無理のない運用が可能です。
また、次の予約を取らずに帰られた患者様をリスト化し、電話やメール、リコールハガキを用いて患者様へコンタクトを取ると効果的です。

予約やメインテナンス時期のお知らせをする仕組みを院内で構築し、適切なツールを活用することで、リコール率アップを目指しましょう。

この記事では、リコール率アップにつながるポイントを4つ解説してきました。
メインテナンス患者が増えることで、より多くの患者様の健康を守れると同時に、歯科医院の経営改善につながります。
是非、医院の取り組みにこれらのポイントを取り入れてみてください。